April 30, 2004

田尻智氏インタビュー'95

[ Category : Game design ]

1995年の田尻智氏のインタビュー記事を見つけましたので紹介します。

1995年の5月に行われたインタビューだそうですが、ちょうど次の年に田尻氏は「新ゲームデザイン」と「ポケモン」を世に出すことになります。その意味でも注目です。 この記事はどうやらかつて「ビット・ジェネレーション展」を開催していたTV-GAME MUSEUMの月例の研究会の記録のようです。このレポートは「ゲームを読む~“クインティ”を中心に」と題されていますが、中身は結構幅広く語られています。以下気になった部分を引用します。

プログラム技術

テクノロジーが進化するレールの向こう側にだけ、価値あるゲームが生まれる可能性があるのでしょうか。一般的にはそうでしょうが、決してそれだけでもないんです。 (中略) 色を落とすというローテク化が、うまく演出につながっていて、技術に関する考え方が昇華されている例といえます。 (中略) ハードの技術革新により単に表現方法が上がることも確かですが、作り手によって手段が選べるようになってきている、ということの方が僕にはより重要ですね。

前半は「枯れた技術の水平思考」にも通じる考えですね。むしろ、そのままを指しているのでしょうか。後半はテクノロジーの発展は表現能力の向上ではなく、方法の多様化の利点が大きいという意見です。これは私も同意見です。作り手にとっては差別化が可能な方が良いわけですから。

*2004-05-19追加

E3でNintendoDSが発表されましたが、考え方として非常に近いものがあるように思われます。PSPとの設計理論の対比が面白かった訳ですが、これが凶と出るか吉と出るのか。どのようなソフトが出てくるかにもよりますが、興味深いことだと思います。

ゲームデザイン

これは遊びを作っている基本ですからテレビゲームならではの楽しみ以前に、遊びの原型として何を取り込んでいくのか、というところが大きいと思います。ですから「遊びの基本をまず作るんだ」、ということから出発しないと失敗するのではないかと思います。

(中略)

こうした非常に原始的な遊びや選択の場面をいくつ知っていて、どれだけ取り入れていくのかというのがノウハウの基本だと思ってます。

(中略)

 あるゲームを読みとるときに、そのゲームの前後にどのようなゲームが出ていて、そのゲームとどこが似ているとか、その表現からどんな作業を行って、ゲームデザインがなされたのか、といった歴史もふまえて読みとらないと、あるゲームについてのゲームデザインの構成というのは分からないと思うんです。それを最後まで手繰ってゆくとさっき言った、三竦み、ジャンケンのようなところまで遡るんだと思います。

大変興味深い記述です。「遊びの基本をまず作れ」という部分は特に重要です。

以降気になった部分

ゲームデザインには二種類あるな、という気がしています。それは時間が相対的に流れているものと、絶対的で、自分が動かせない時間が流れている場合があるものです。
時間の流れによる分類の考えです。田尻氏は「アクション性」と言う言葉を用いて説明しています。プレイヤーのアクションに反応してゲーム内でアクションが起きたとしても、それは「アクション性が低い」ということになる。時間が相対的に流れるゲームデザインは実は「アクション性」が低いのでないか、と。これもまた興味深い分析です。
すぎやまこういち:ゲーム音楽の場合は何回繰り返し聞いても飽きない、聞き減りしない音楽を作らなければいけない、というのは基本的にあるわけです。 (中略) ゲームの音楽は音楽であると同時にその音楽自体がある種のメッセージであったり、お知らせであったりすることが非常に多いわけです。(略)こうしたメッセージ性があるというのが大きなポイントですね。

何故かいきなりすぎやまこういち氏が出てくるのですが、ゲーム内での音楽について興味深い話がなされています。とくに、「ゲームの音楽にはメッセージ性がある」と言う点は参考になります。 うろ覚えなのですが、どこかで「優れたゲームデザイナーは、グラフィックよりもサウンドに注力する」という言葉を目にしたことがあります。言い得て妙、だと感じたのですが、すぎやま氏の発言内容と関連してサウンドとゲームデザインの関わりと言うテーマにも注目ではないか、と考えます。

氏の「新ゲームデザイン」は私はまだ未読なのですが、それに繋がることが色々言われているような気がします。「新ゲームデザイン」が入手できた場合には、また比較して検証してみたいと考えています。

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