May 06, 2004

「塊魂」のゲームデザイン分析

[ Category : Game design ]

先日のIGDA第7回ゲーム開発者セミナー(GDC2004レポート)に参加し、「塊魂」のディレクター、高橋慶太氏のインタビューを聞いてきました。発言のあちこちにゲームデザインのヒントがありましたので、個人的に分析してみます。

「ゲームのルールをゼロから作り直してみたいと思った」

高橋氏がゲームのバランスの取り方について質問された際に答えられた言葉です。ゲームバランスや「抑圧と開放」などの旧来から言われてきた方法論を「堅苦しい」とし、それらに一切捉われずゼロから構築してゆくという手法をとったといいます。

この発言通りに、塊魂は幾つかのゲームデザインにおける昔ながらの発明を採用していません。たとえば、高橋氏は「アイテムが大嫌い。絶対出さないようにした。」と発言されていましたが、古典的な発明であり、常識とも言える「アイテム」が塊魂には存在していません。

シンプルな構造

高橋氏は、レベルデザインについて質問を受けた際に、

適当に動かしていれば塊が大きくなるようにモノを配置した。『ここへ行かなければ大きく出来ない』、ということはゲームをやりなれている人しか分からないのでやらなかった。

と発言しています。ライトなプレイヤー層を想定することで、これまでの「ゲームの常識」が「一般人の非常識」であることが明らかになり、その結果、塊魂はだれでもすぐに分かるゲームの構造が成り立っています。

前述の様に、「アイテム」「敵」「障害物」といった概念は全て存在せず(正確には区別が無く)、全て「モノ」として捉えなおしています。「モノ」を集めてただ大きくするだけ、というコンセプトは確かに分かりやすいと同時に、それまで徐々に構築され多く採用されてきたゲームの常識を採用しない、大変シンプルな構造を持ったゲームになる要因となっています。

このシンプルな構造は「テトリス」のプリミティブさにも類似しています。塊魂が注目される所以とも言えるでしょう。

行為と直結するスティック操作

高橋氏は塊魂の2本のスティックを使う操作について以下の様に述べていました。

2本のスティックで操作するのは、手のかわり。1本も試したが、やはり2本でないとダメだった。トラックボールは、それ自体の操作の方が面白くなってしまい、悔しいので採用しなかった。

塊を転がす行為は、普通は2本の手を使って行うのだから、2本のスティックを使った、という話です。この言葉の裏に見られるのは、氏が「実際の行為」と「ゲーム中の行為」、それぞれの差異を嫌っていることが伺われます。また、トラックボールを採用しなかったことも、あくまでも「塊を転がす手の動作」をさせたいのであって、直接塊を操作する訳ではない、という塊魂固有の操作へのこだわりが見られます。

PS2のコントローラーを使用して、もっとも自然な、ゲーム内での行為をシミュレートした操作方法を突き詰めていった結果が、この2本スティック操作になっていると考えられます。このことから塊魂は「操作感覚」にかなりの注意を払っていることが分かります。しかも、単に操作しやすい、と言うのではなく、人間の自然な感覚に最も近い形を模索していると言えます(単に操作しやすいと言うのであれば別の操作方法を採用したでしょう)。


「100%やりこむな、と言いたい」

高橋氏はインタビューのあらゆるところで「そんなにゲームするな」「100%やりこむな」「所詮ゲーム」「おもちゃでいいじゃん」等等、根気を詰めたプレイを推奨しない発言をしています。

実際のゲームプレイにおいても、塊魂の面白さはやりこみには無く、「塊を転がして、モノをくっつけて大きくする」という操作・感覚にあります。一度でもプレイした方なら、操作に中毒性を感じられることに同意していただけると思います。

ゲームとトイの違いは目的の有無であるとGreg Costikyan氏は述べていますが、塊魂から「目的」を取り去って単なるおもちゃとしても、操作感覚の面白さは変わらないことが想定できます。このことからも、塊魂が操作感覚に面白さの重点を置いていることが分かります。

私は個人的に、ゲームデザインの基本は操作・感覚にあると考えています。塊魂が一見奇抜に見えるが実はゲームらしいゲームであると言う理由も、面白さの中心を操作・感覚に置いているからではないか、と考えています。

「今後はゲームにしかできないことを追求してゆきたい」

ここまで、高橋氏のインタビューからゲームデザインのヒントとなる部分を分析してみました。これを一般的に整理しなおすと以下の様になります。


ゲームのルールをゼロから作り直す

⇒これまでの暗黙の「ゲームの常識」を疑い、新しく捉えなおしてルールを作る。

「実際の行為」と「ゲーム中の行為」を近づける

⇒操作感覚を自然な形に持ってゆき、ゲームとの一体感を産み出す。またメタファの理解を容易にする(一種のメンタルモデル?)。

操作・感覚の面白さに注力する

⇒目的達成を強要しないデザイン。

以上三点が抽出できると考えられます。どれも重要な方法論です。

塊魂自体のゲームデザイン分析はまだまだ突き詰められると思いますが、とりあえず今の所はこれで終わりにしたいと思います。

*2004-06-01追加 続編の年内発売が決定したそうです。

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CMだけ見ると、なにをどうゲームするのか
わかんなかったけど…ほほう。。。

Posted by: いざまん : May 6, 2004 04:43 PM

Nice blog. my site: Milf http://www.milf-rider.us

Posted by: Milf : August 4, 2004 02:46 AM
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