April 19, 2004

ゲームデザイン方法論2003(1)

[ Category : Game design ]

2003年のゲームデザイン論/方法論についてまとめた大変素晴らしい記事があったので紹介します。

その記事はGamasutraの記事でGame Design Methods: A 2003 Survey(ゲームデザイン方法論2003)と言う記事です。長いので幾つかに分けて紹介します。

The Aim Of Game Design Methods(ゲームデザイン方法論の目標)

・ゲームデザイン方法論のあるべき姿
Doug Church氏によれば("Formal Abstract Design Tools.")、ゲームデザイン方法論のあるべき姿は以下のようなものだそうです。

1.Relate to game design. The method has to be applicable to the actual interaction structure and mechanics of a game, not to concerns related to marketing, production, or management. This restriction is debatable (as it is easily violated), but it does define the scope of this article as well as the roundtables. While methods addressing the development process and its constraints are certainly needed (whether or not their substance is specific to games), they are not considered "design methods".

1.ゲームデザインに関係すること。ゲームデザイン方法論は実際のゲームのメカニズムやインタラクションの構造に適用可能であるべきで、マーケティングやプロダクションやマネジメントに関係すべきではない。この制限はよく議論されるところである(そして簡単に破られることでもある)が、ラウンドテーブルと同じくこの記事の範囲を規定するものである。開発プロセスやその制限についての方法論は確かに必要であり、ゲームに特有のものでもあるのだが、「ゲームデザイン方法論」とは考えられていない。

 2.Have utility - it should be a "tool". A method has to be more than just a list of concrete examples or a definition of a building block. A method involves a procedure, a step-by-step recipe, at least parts of which can be applied by simple, even automatic repetition. In particular, it should address specific and concrete issues occurring during the design stage of game development.

 2.実用性をもつこと。ゲームデザイン方法論は「道具」として使えるものであるべきである。単なる具体例のリストや基礎の定義以上のものでなくてはならない。ゲームデザイン方法論は少なくとも、簡単に、場合によっては自動的に繰り返すだけで適用可能な部分の手続き、いわば「レシピ」を含む。特に、ゲーム開発のゲームデザインの段階で起こる、特有で具体的な事例の解決に取り組むものであるべきである。

 3.Be abstract. A method has to apply to a large, presumably infinite number of game situations or instances. The actual level of abstraction can vary (e.g., genre-specific, or applicable to any interactive medium, etc.) but it has to be at least one step removed from the concrete instance (game or game element).

 3.抽象的であること。ゲームデザイン方法論は、推測可能な無限のゲームの状況と例に適用可能でなくてはならない。実際の抽象のレベルは可変(たとえば1ジャンルに特有なレベルからインタラクティブメディアに適用可能なレベルまで)だが、少なくとも具体的な実例(ゲームやゲームの要素)から一歩離れたものでなくてはならない。

 4.Be formalized. A method needs some degree of formal structure, some amount of specific organization. Typically this consists of a template structure used repeatedly to contain information. Rollings' use of fictional dialog and anecdote [22] and Rouse's reliance on interview [29] are examples of forms found outside the context of game design.

4.形式化されていること。ゲームデザイン方法論はある程度の形式化された構造、ある特定の量の組織化が必要である。この典型的なものは、情報を含むために繰り返し使用されるテンプレート構造になっている。Andrew Rollings氏("Game Architecture and Design")の仮想の対話と逸話を使う方法や、 Richard Rouse氏("Game Design: Theory & Practice")のインタビューへの信頼などは、ゲームデザインのコンテキストを明らかにする形式の例である。

*(強調部分・日本語訳は私によるものです。)

大いに賛成させられる内容です。例えば1の例で言えば、ゲームデザインと言っていながらかなり技術系であったりする文章が多く、本当にゲームデザインが論じられているのかどうか疑問を呈せざるを得ないこともしばしばです。ゲームデザインについてしっかりと論証してゆくために絶対に必要なことです。

2に関しても、机上の空論に留まらない為にも必要でしょう。3・4は2を補佐する形です。実用的であれば、それだけ人々の注目を浴び、結果的に研究者が増えてより良いものになってゆくはずです。

・映画のプリプロダクションとの比較
Mark Cerny氏(マーク・サーニー氏、一般的には「ラチェット&クランク」「ジャック×ダクスター」で知られる。氏の講演"Method"の音声とスライドが公開されている )によれば、ゲームデザインはプリプロダクションの一部であるそうです。 映画のプリプロダクションとの比較事例として次のようなものが挙げられています。

ゲームと映画はよく比較されます。個人的には異なるメディアなので制作技法やデザインで応用できるものは少ないと思っています(そもそも「映画をデザインする」という発想をほとんど聞きません)が、産業的にも歴史的にも映画の方が進んでおり、それだけ研究も進んでいるので得られるものはあると思います。

特に、映画に対する研究がどのように行われてきたのか、という点で多くの得られる部分があるような気がしています。

・ゲームデザイン方法論の定義への試み

Possibly the earliest attempt to define a game design method is the game design document. (おそらく最も初期のゲームデザイン方法論の定義の試みは「ゲームデザインドキュメント」である。)

*(日本語訳は私によるものです。)

この試みとして、先日エントリーした"Formal Abstract Design Tools"やHal Barwood氏による"400 Rules"とこれに基づくNoah Falstein氏の"400 Project"(参考として"Fundamental Principles of Interactive Entertainment"(対話型娯楽の基本原則)が挙げられています)などがあるとの事です。 またデザインパターンの考えをゲームデザインに応用したゲームデザインパターンや、テキサス大学での"Lexicon Project"などの動きがあるとの事です。

ゲームデザインパターンについては、GameDesignPattern.orgGamasutraの記事に良くまとまっています。それと「Game Design Patterns」という書籍も存在するそうです。

日本国内では、こういった話がほとんど聞かれてきません。私の調査が不十分ということも考えられるのですが、幾つかの現場の開発者が書かれたゲームデザインについての書籍が数冊存在する以外には、ほとんど目にすることがありません。特にアカデミックな分野での研究・調査がほとんど見られませんし、論文等も目にすることがありません。

参考に、簡単にですが日本語で読めるゲームデザイン関連の書籍等を挙げてみます。

これ以外にも存在しますが、それらは断片的な情報なので割愛します。このリストを見ていただくとわかるように、3/7が翻訳です。日本語の情報、特に日本語でオリジナルが書かれたものがとても少ないことがわかるかと思います。また、書かれてから比較的(一般の世では長い時間でなくても、スピードの速いコンピューターゲームにとっては長い)時間が経っているものが多く、逐一現状と照らし合わせていかねばならないということを考えると、どれだけ実用に耐えうるか疑問なものも多いです。日本語だけで追いかけているとゲームデザイン研究の最新の考えを理解することはかなり難しいです(現時点で「ゲームデザイン誇大妄想狂」がもっとも新しい内容を含んでいますが、最新の研究はさらに先を行っています)。日本語でのゲームデザイン研究に関しては、改めてまとめてみたいと考えています。

*2004-05-30 一部更新

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ゲームデザイン方法論2003(2)
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