1999に書かれたFormal Abstract Design Toolsという記事を紹介します。ゲームデザインの共通の語彙について書かれています。
簡単な意訳を。
ゲームデザインは、ゲーム制作において最も理解されていない面である。CDをデータで一杯にしても、なんの楽しい体験も産み出さないように、ゲームデザインこそがゲームをゲームたらしめているのだが(The design is the game)。
悲しいことに、ゲームデザインはまた、その進歩にもっとも大きな問題を抱えているという面もある。過去の発見をまとめ、成功したコンセプトを共有し、異分野から学んで適応させてゆく、ということが不十分である。他のゲームの技術の発展に比べて、ゲームデザインは大変遅れているのである。
ゲームデザインの発展が上手く行かない原因に、ゲームデザインを語る共通の語彙が存在しないという事がある。ゲームデザイナーは「楽しい」か「楽しくない」かでしか語れず、そこで分析が終了してしまうのだ。つまり、ゲームデザイナーは共通のゲームデザイン言語を求めているのである。
ゲームデザイン言語があれば、ゲームをコンポーネントに分解し、それらのコンポーネントがどのようにバランスを保ち、どのように組み合わさっているのか理解できるだろう。適切な語彙があることによって、ゲームデザインに対する理解も深まるのである。
ゲームデザインは画面に直接現われてくるわけではない。それ故、その発展は大変停滞してきた。共有されるゲームデザインの語彙があることは、大変有効なことである。「Formal Abstract Design Tools(FADT)」は、これらの語彙を構築するためのフレームワークを作成しようとの試みである。
もちろん、FADTでゲームを制作できるわけではない。ゲームデザイナーは、何が楽しいのか、自分のゲームはどんなものなのか、自分がどんなヴィジョンや目的を持つのか、理解しておくべきである。
・例
- INTENTION:Making an implementable plan of one's own creation in response to the current situation in the game world and one's understanding of the game play options.
- 意図:プレイヤーがプレイの選択肢を理解できるように、そして、プレイヤーがゲームの世界に反応を起こせるように、実現可能な計画を立てること。
- PERCEIVABLE CONSEQUENCE:A clear reaction from the game world to the action of the player.
- 知覚可能結果:プレイヤーが起こしたアクションに対する明確なゲーム内での反応。
- STORY: The narrative thread, whether designer-driven or player-driven, that binds events together and drives the player forward toward completion of the game.
- ストーリー:ゲームデザイナーが用意したかプレイヤーが想像したかはともかく、話の筋道がイベントを結びつけ、プレイヤーをゲームの攻略に進ませる。
ゲームデザインを研究する際に問題となるのが、あらわす語彙の不足です。とある問題があっても、それをあらわす表現が無い為に、コンセンサスがとれず、ひとりがひとりで解決すると言う形になってきたのが過去のゲームデザインです。
形式化することによって、それに捉われてしまって新しい発想ができなくなると言う意見もありますが、同時に、やらなくてもいい車輪の再発明をなんども繰り返すこととなり、大変非効率的でありました。
このFormal Abstract Design Toolsではその問題に対し、例を挙げながら解決していこう、という文章になっています。関連した文章を幾つか見つけたので徐々にですが紹介していこうと思います。
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